ECサイトのリニューアル、失敗しないために必要なことは?(1/2)
ECECサイトを長く運営していると、システムの老朽化や事業の拡大などでリニューアルを検討することもあるでしょう。しかし、リニューアルをする際は本当にする必要があるのか、するならどこを変え、それにより何を目指すのか、明確にしなければ失敗してしまう恐れがあります。「前回のリニューアルから時間がたったのでそろそろ変更したほうがいい」などというふわっとした理由でおこなえば、無駄な時間と金額を費やすことになりかねません。そこで今回はECサイトのリニューアルについて、失敗事例を交えながら必要な手順や注意点などを紹介していきます。
ECサイトをリニューアルする理由とは?
ECサイトのリニューアルを検討するタイミングはいくつかあると思いますが、リニューアルの理由としては大きく以下の4点があげられます。
- 1.システム上の問題
- システムの老朽化によるセキュリティの脆弱化などが理由です。しっかりとしたセキュリティ対策をしなければ個人情報の漏洩などに繋がり、ECサイトの信用は地に落ちます。また、システムが古くなると動作不良が起きたり、新しいデバイスやブラウザなどの新技術に対応できなくなったりします。ASPやクラウドECを利用していればシステムは最新のものに保たれますが、オープンソースやパッケージを利用している場合は対策が必要です。
- 2.ユーザビリティの低下
- ECサイトの内容を充実させていくと、コンテンツやページが増えていきます。きちんと改装を分けて整理し続けられるのであれば問題ありませんが、たいていは整理しきれず分かりにくくなりがちです。特にユーザが迷子になるようなユーザビリティの低い、つまり使いにくいサイトになってしまったときはリニューアルをお勧めします。きちんとサイトマップを描いてカスタマージャーニーを最適化すれば売り上げ増にもつながりますよ。
- 3.事業・売上拡大
- ECサイトを立ち上げた当初よりも事業規模が拡大すれば、必要になる機能も増えてくるはず。以前は人的作業で何とかなっていたものも、数が増えればシステムに任せて業務効率を高めたほうがよいでしょう。また、売上を拡大するためには販売促進をはじめとしたマーケティングの機能の強化や、新たな外部システムとの連携を検討する場面も出てくるかと思います。そうしたアイデアを実現するには、サイトのリニューアルが必要になります。
- 4.スマートフォン対応
- 今では消費者がスマートフォンやタブレットを使ってネットショッピングをするのは当たり前です。特に消費者向けのECサイトの場合、「スマホ対応」ができていない場合は早急にリニューアルする必要があると考えてください。
ECサイトのリニューアルの相場は?
ECサイトのリニューアルといっても、規模は場合によりさまざま。デザインを中心に変更するケースから、新機能を次々と搭載するケース、カートシステムを刷新するケースなど、作業量に合わせてリニューアルの費用は変わります。構築方法によっても異なるので、必ず見積もりをとるようにしましょう。
なお、弊社はオープンソースをカスタマイズして提供することが多いので相場についてもカスタマイズありきで記載いたします。
構築方法 | ASP | オープンソースをカスタマイズ | フルスクラッチ開発 |
構築費用の相場 | 〜数10万円規模 | 数10万円〜数100万円 | 1000万円以上 |
構築期間の目安 | 1〜3ヶ月程度 | 3〜6ヶ月程度 | 1年程度 |
想定規模(年商) | 〜1,000万円/年 | 〜10億円/年 | 10億円〜/年 |
カスタマイズによる 機能追加 | ASP提供範囲内 | 概ね可能(決済は除く) | 可能 |
集客施策(SEOなど) | ASP提供範囲内 | カスタマイズにより可能 | 可能 |
解説 | ECに関する基本機能が用意されているので手軽に始められる。反面、自由度は低い。 | ECの基本機能はオープンソース+プラグインを活用し、必要な機能追加をオリジナル開発。フルスクラッチではないが、比較的自由度が高い。 | EC機能から開発するので自由度の高さがメリット。 反面、構築費用が高く・構築期間も長い。 |
ECサイトのリニューアル成功のポイント①失敗の理由を学ぶ
次に、ECサイトのリニューアルの手順について見ていきます。それぞれ成功させるためのポイントも併せてまとめたので、参考にしてみてください。
まずしておきたいことは、他社の失敗からリニューアルのリスクを学ぶことです。サイトのリニューアルを決めたあと一番気になるのは、いかにリニューアルを成功させるかということでしょう。だれしもリニューアルを成功させたいと思っています。ところが、理由もなくリニューアルした結果よくわからないサイトになったり、デザインを重視しすぎた結果ユーザビリティが低下して売上が激減したり、ECベンダーに丸投げした結果運用しづらいものができたり、機能を盛りすぎた結果スケジュールが間に合わず中途半端なリニューアルになり炎上したり…。
リニューアルの失敗事例は数知れず。このため、逆に「なぜ失敗したのか」という事例を押さえておくと、自分たちがリニューアルする際何に注意すべきか、リスクは何かを知ることができます。特に同業他社の失敗例はチェックしておくことをお勧めします。
成功のポイント②目的を明確化し具体的な目標を立てる
失敗例としてよくあるのが、リニューアルの目的がはっきりしないまま突き進むこと。上司の命令だったり、前のリニューアルから時間がたったからだったり、デザインをなんとなく変えたかったり、といったふわっとした理由ではリニューアルは成功しません。明確な目的がなければ「どこを」「どう」リニューアルするのかなかなか見えず、デザインやサイト設計を決めるのにどんどん時間をかけた挙句、迷走してリニューアルせずに終わってしまうこともあります。目的が明確だと判断基準を持ちやすいですし、「あれもこれもやりたい、でも予算がない…」と迷ったときに優先すべき事項が分かりやすくなりますよ。
目的を決めた後は、目的を達成するための目標を設定しましょう。この時、なるべく具体的に設定することをお勧めします。例えば「売上15%アップ」「リピーター20%増」などです。具体的に設定するとリニューアルすべき場所をより見つけやすくなります。
成功のポイント③改善すべき課題を入念に洗い出す
目標が決まったら、達成するために現状の課題を確認し、何をどのように変えるべきか考えましょう。この際、ユーザ側のユーザビリティの向上をめざすとともに、管理者サイドの業務についても確認することが重要です。ユーザが利用しやすくても、管理者が使いにくいサイトは運営しづらいだけ。ストレスなく管理できる環境を作りましょう。
ユーザ側の課題を知るには、顧客対応を実施している現場のスタッフにヒアリングするのがお勧め。問い合わせ窓口に集まったユーザの意見は参考になります。また、管理者側の課題については、事前に現場のスタッフにヒアリングしておきましょう。現場から離れている管理職だけで進めると、リニューアル後に使い勝手が悪く、結果人件費が増えた、ということにもなりかねません。この際、現在の業務フローをまとめておき、改善後の業務フロー案と比較できるようにしておくと分かりやすいですよ。
成功のポイント④リニューアル方法は慎重に決める
リニューアル内容がある程度決まったら、リニューアルの時期や予算を決めたうえでその方法を決めます。つまり、外部の制作会社に委託するか、自社で内製するかです。
制作会社に委託する場合は見積もりをとり、数社を比較・検討しましょう。見積もりについては出された値段を重視するのではなく、技術力がある会社を見極めることが重要。見積もりを出す会社の過去の実績や評判などを調べておきましょう。同じ業種のサイトを作った実績があると話が早く進むかもしれません。また、求める機能があるのか、リニューアル後のサポート体制はあるのか、カスタマイズ性がどの程度あるのかはチェックしておくことをお勧めします。
一方、自社でのECサイトのリニューアルはもちろん可能ですが、かなりのリソースが必要ですのでその点は注意しておきましょう。
成功のポイント⑤システムの要件定義は必須
制作会社が決まったら、開発会社との認識のすり合わせ、つまり「要件定義」をおこないます。具体的にはサイトマップやデザインなどの「サイト要件」、システム改修やサーバ変更、決済方法、カートシステムの刷新やセキュリティなどの「システム要件」について打合せします。このとき、サイトリニューアルの目的、目標に今一度立ち返るとともに、そのための課題をいかに解決するかを重視し、必要なサイト要件やシステム要件を話し合いましょう。
- 執筆者:栗本奈央子
- 主にウェブメディアのライティングを担当。旅行、ライフスタイル、IT分野などの記事を執筆。
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